プロローグ

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   躊躇っておきながら、煙から視線を外し若々しくも、見事なラインの女の下着姿を見ながら10数年前を思い出した。  10数年前に、男はこの場に別の女といたのだ。 「俺が貧乏で若かった頃、当時の女と一夜を共にした場所だ」 「それって、どのくらい昔の事?」 「学生の頃だ……」 「実は、初体験だったとか?」 「いいだろ、別に……」  自分よりも10近く若い女に、図星な事を言われて男は黙るしか無かった。  煙草を灰皿でもみ消すと、女を後ろから抱き締めて若い女の肌の質感を感じ取る。あの日の女も、肌の綺麗な女だったとセンチメンタルな気持ちになっていた。 「ねぇ?」 「なんだよ」 「本当に、奥さんにはバレてないの?」 「最初から知ってたかもしれないが、あいつはだからって何かをするような女じゃないさ」  男は、女から手を離し自分も服を拾い上げる。 「じゃあ、どうして私とこんな関係を続けるの?」 「それは、お前が妻と別れて結婚しろとか言わない、面倒な女じゃ無いからだ」
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