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…リン…リン…リン…   …私が はじめて 鈴の音を耳にしたのは 確か…   桜が咲き始めた頃でした…。    「彩香?どうしたの?」 私は 静音に声をかけられてはっとした。 「ねぇ、鈴の音しなかった?」 静音は 小首をかしげて 私を見つめた。 「そう?なら、気のせいね」 …私は 鈴の音を確かに聞いたはずなのに… …忘れてしまった… 全ての出来事が 今動いた事にさえ気がつかずに私は…鈴の音を忘れてしまった…。 どうして 忘れてしまったのか… …あの人に出会えた唯一の鍵だったのに…     桜は少しずつ咲きそろい始めたある日、私は 学校の帰り道…。 …最初の鈴の音と同じ桜の木の前だった…   …リン…リン…リン…。 「…!?…鈴の音…!」 私は 確かに鈴の音を聞いていた事を確信した! 辺りを 必死に見渡したが 何も見つける事は出来なかった…。 諦めて前を向いた時信じられない光景が目の前で繰り広げられた。 人の悲鳴、馬の鳴き声、そして見た事のない姿をした男達が いた。 「…何…」 私は 言葉が出なかった…。 男達が こちらに向かい走ってきた。 「…!?」 立ち尽くす私を男達は 擦り抜けていった… 「…!?…何が起きたの…頭が痛い!!」 あまりにもの頭痛に座り込んだ 「彩香!?どしたの?」 顔をあげると 静音がいた。 「どうして…?ここに…?」 「どうして?って…帰り道だし…桜も綺麗でしょ…」私は 静音の言葉通りに桜を見つめた。 と、同時に何も無い事に気がついた…。 …人も…馬も…鎧も…。 …あれは…何だったの? …幻…だったの? 「どうしたの!?彩香?最近何か変よ…」 私は、静音に腕を掴まれて、再び我に返った。 「…え、何でもないわ…ありがとう」 私は 愛想笑いで返した。 「そう?ならいいけど…」 静音は 納得出来ないながらも 腕から手を離してくれた。 それから 私はどうやって家に帰ったのかは わからないまま…。 ただ ずっと 静音は側にいてくれた事だけは…覚えていた。 そして 次の日は頭痛に負けて起き上がれなかった。
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