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ハッと目を覚ました。携帯電話のサイドボタンを押し、時間を確認する。
無機質な時刻表示は、まだ夜中であることを淡い光で示した。
「……夢、か」
暗く薄ら寒い寝床に居るというのに、何やら嫌な汗をかいている。
昔からあまり夢見の良い方ではないが、今回の夢は、しばらく記憶にこびりついて残りそうだ。
「全く、役に立っちゃいないんだから」
私は、蛍光灯のコードの先に結わえているドリームキャッチャーを見上げた。悪夢など、蜘蛛の巣のような網が絡め取るアイテムだそうで、こうして寝室に吊り提げている。
わざわざアメリカからこれを買ってきてくれた、悪友の気遣いはありがたかったが――大した効果を発揮していないのが現状だ。
布団をかぶり直し、かたく瞼を閉じる。今日もまた、母方の里へ遺物整理に行かなければならないから、しっかり体を休めておかないと。
けれども、夢の印象があまりにも強すぎて、結局朝まで眠ることは出来なかった。
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