うつつ 四つ

2/5
前へ
/25ページ
次へ
 ハッと目を覚ました。携帯電話のサイドボタンを押し、時間を確認する。  無機質な時刻表示は、まだ夜中であることを淡い光で示した。 「……夢、か」  暗く薄ら寒い寝床に居るというのに、何やら嫌な汗をかいている。  昔からあまり夢見の良い方ではないが、今回の夢は、しばらく記憶にこびりついて残りそうだ。 「全く、役に立っちゃいないんだから」  私は、蛍光灯のコードの先に結わえているドリームキャッチャーを見上げた。悪夢など、蜘蛛の巣のような網が絡め取るアイテムだそうで、こうして寝室に吊り提げている。  わざわざアメリカからこれを買ってきてくれた、悪友の気遣いはありがたかったが――大した効果を発揮していないのが現状だ。  布団をかぶり直し、かたく瞼を閉じる。今日もまた、母方の里へ遺物整理に行かなければならないから、しっかり体を休めておかないと。  けれども、夢の印象があまりにも強すぎて、結局朝まで眠ることは出来なかった。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加