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寝不足のまま車を走らせて、母方の里に到着。いつものように母屋の勝手口から入ると、母はもう先に来ていた。
引き戸の音に気づいた母が振り返る。
「おはよう、あら、あんた瞼腫れとぉよ?」
「夢見悪くて眠れんかったけん」
母は自分が愛飲しているルテインの瓶を指差した。
「二錠飲んどきなさい」
「はいはい」
「あんた朝ご飯食べて来た?」
「うん」
本当は起きて着替えてからすぐ出てきた。食事などしばらくは、喉を通りそうにない――あの夢のせいだ。
その場にいると無理やりにでも食べさせられそうだったので、ルテインだけさっさと飲んで、さっそく自分の作業に取りかかった。
眼鏡にマスク、軍手を装着し、延長コードと掃除機を抱えて二階へ上がる。
物置部屋の前から掃除機をかけて始め、十分もしないうちにパック取り替えサインが点滅した。
「ったく、どんだけ放置されてたんだか……」
きっとウン十年と放置されっぱなしだったに違いない。
掃除機パックの詰め替えを五つ、薄汚れた割烹着のポケットに押し込み、積もりに積もった煤や埃の山をガンガン吸い取る。
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