721人が本棚に入れています
本棚に追加
言葉で何を訴えようと子供の自分では無理だとテリーは理解していた。
どうしようか辺りを見ると、扉のそばにある棚の上にナイフが見えた。
……これで止めなきゃ。僕が止めなきゃ……。
この時はこれが正しいことだと信じていた。
ナイフを手に取る。
子供の小さい手には少し大きかったが大した問題ではない。
革製の鞘からナイフを抜き取り扉に近づく。
少し開いた扉からは男が見え、その奥に母リリスが見えた。
愛しい母の姿を見ると王妃が死ねば……と考えてしまったが、首を振り邪念を振り払う。
そして、勢いよく扉を開けナイフを構えて男に突っ込んだ。
男は突然のことに反応できず腹にナイフが深く突き刺さった。
「きゃあぁぁぁぁ!!」
リリスの悲鳴を聞き、急いで男からナイフを抜き取る。傷口からまるで噴水のように紅蓮の液体が飛び出した。それはテリーの身体に付着し、血液独特の鉄の臭いが鼻を掠めた。
最初のコメントを投稿しよう!