徐州へ

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数日後、陳登は公務所の中で、資料の山を前に、ため息をついていた。 資料は各地の荒廃の状況を伝えてはいる。 しかし、何から手を着ければ良いのかについては、さっぱり分からない。 陳登は、資料を指差しながら下役の者に、 「こいつを片付けておいてくれ。」 と命じて席を立った。 下役の男は、 「御用事でしたら、私が参りましょうか?」 と聞くので、 「いや、自分で行くよ。」と短く答えて戸口へ向かった。 「では」と下役は後ろから声を掛けてくる。 「何処に行くのか。教えて下さい。急用の時に困りますから。」 「華子魚殿に会うのだ。」と言い残すとそのまま公務所を後にした。 華子魚とは、華キンと言い、子魚は字である。 後年、魏に仕えて三公となり魏の屋台骨を支える人物である。 この時期、都では霊帝が崩御し、後継者問題が紛糾して政変に発展していた。 華キンは尚書郎の地位で都の洛陽に居たが、動乱を避けて徐州に逗留していた。 陳登は、華キンと語り合って、その見識の高さを尊敬していたのだ。 陳登は、華キンに教えを請おうと思っていた。
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