徐州へ

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霊帝崩御の後、洛陽を武力制圧した西涼の董卓は、皇帝の廃立に容喙する。 それに反発した諸侯は、各地の勢力を糾合し、反董卓の兵を起こして洛陽に迫った。 恐れた董卓が、長安への遷都を強行したため、俄かに攻撃目標を失った諸侯は、兵を擁したまま洛陽郊外で、今は為すところなく日を送っている。 「何が気になるのですか?」 陳登にも都の近況は気になるところである。 訪問の目的も忘れて華キンの話しに聴き入った。 「反董卓の兵はもうすぐ解散するよ。」 「え?」 陳登が驚いていると、華キンは、 「兵站が続かないさ。10万を超える兵を一日養うにも大変な負担だからね。」 「なるほど。」 食料事情の悪化が深刻になっているのは、何も徐州だけではない。 「気になるのは、その後諸侯がどうするかだ。」 「というと?」 「反董卓連合が解散したからといって、諸侯が武装解除するとは思えない。」 「あ!」 「そう。群雄割拠の状態になる。」 「う~ん。」 陳登は呻いた。 華キンの先見の明にはいつも驚かされる。 徐州の地に閑居しながら、そこまで見通しているとは。 「理の当然だよ。」 華キンは、驚くには当たらない、といったふうである。
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