徐州へ

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「ほう。何故かな。」 華キンが更に問う。 「それは、特に、長安遷都後、明確な方針を示さないで、長く兵を野ざらしにしているのは、決断力に欠けているからのように思います。四方の諸豪を糾合しながら統御出来ないのは、それだけの器量がないからではないでしょうか。」 と陳登は考えつつ言葉を継いだ。 「ふむ。」 やはり見るべきところは見ているのだな。 華キンも陳登の慧眼を高く評価していた。 「しかし、私は中原の情勢に疎いので、他に人物が見当たりません。」 陳登は正直に言う。 陳登は、地方の一行政官に過ぎない。 中原の人物には詳しくなかった。 「ふむ。」 もう一度唸った後、華キンは、 「或いは曹将軍なら。」 と言った。 華キンは中原に人脈があるため、徐州にあっても中原の様子を知ることが出来る。 「曹将軍ですか?」 陳登も曹操孟徳の名前ぐらいは知っている。 華キンは続ける。 「曹孟徳殿も奮武将軍と号して、反董卓連合軍に参戦していたよ。」 「そうですか。」 「反董卓連合軍が洛陽郊外で停滞した時、目的に沿った行動をとったのは曹将軍だけではないかな。」 「それは?」 「僅かな手勢のみで董卓を追撃した。もっとも、衆寡敵せずで敗れはしたがね。」
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