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「その後、曹将軍はどうしたのですか?」
「自分の根拠地に引き揚げたそうだ。」
「勝手に帰ったのですか?」
「まあね。」
一見、身勝手な振る舞いのようだが、何ヶ月も無為に兵を野ざらしにするよりは、理に適った行動ではある。
注目すべき人物か…
と陳登は考える。
気がつくと、そろそろ公務所へ戻らねばならない刻限であった。
結局、農政について教えを受けることは出来なかったな。
だが、貴重な話しを聞くことが出来た。
無駄ではなかった…
と陳登は思う。
去り際に華キンは、
私は農事に詳しくないが、
と前置きして、
「古の聖帝禹の故事を思い出してください。君なら良い方策を見つけることが出来るでしょう。」
と微笑みながら言った。
陳登は、華キンの意図するところを即座に理解した。
華キンもまた、陳登には多くの助言が必要ないことを知っていたのだろう。
聖帝禹は、治水のために自らこの国全土を駆け回り、すねの毛が擦り切れて生えなかったという。
自ら動かなければ、何も変わらないのだ。
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