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それと知った陳登は、華キンの栄達を喜びつつも、別れを惜しみ、ささやかな宴を設けた。
二人は、且つ語り、且つ酌み交わし、夜の更けるを忘れたという。
華キンは、いくら飲んでも乱れることがない。
ただ酔いを発すると、挙措態度のうちに、えも云われぬ風韻が漂うため、その姿は華独歩と呼ばれていた。
人格の陶冶された人物は、酔ってもかくの如きものなのだろう。
一方の陳登は、その人柄は豪壮不羈と言われ、容易に人に屈しない男で、その横溢する覇気に任せて行動するところがあった。
しかし、華キンの風格に薫陶を受け、溢れる覇気を胸奥に秘めて、漸くその人物に厚みと深みを加えつつある。
この二人が酒を酌み交わす姿は、ただこれだけで、一幅の画であり、詩であったろう。
かくて、華キンは任地へと去った。
今や徐州は、陳登の農政宜しきを得て、豊かになりつつある。
だが、それは同時に、周辺諸勢力から草刈場として狙われる立場となる事でもあった。
「華子魚殿は、このことあるを予見して、私に注意を促したのだろう。」
陳登は、周辺勢力の動向に目を配っている。
中でも曹操の勢力伸張振りは、徐州にとって脅威であった。
曹操は、この頃には、青州を平定して、その地の黄巾族の残党30万人を麾下に加えていたのである。
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