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縻竺は、
「そうご謙遜なさらずともよいでしょう。」
と尚も無邪気な様子である。
陳登は、
「あれは、私が撃退したのではなく、放っておいてもいずれ引き揚げたはずです。」
と説明するが、縻竺には、その意味が分からないようであった。
そこで更に
「つまり、曹将軍の今回の出兵は、徐州の地形、地物、将の能不能、兵の強弱を探りにきただけだと思うのです。」
と加えた。
「威力偵察だったと?」
と縻竺は驚く。
しかし、徐州兵があまりにも弱かったため、かなりの地点まで攻め込まれてしまったのだ…
と陳登は思っている。
「もし、そうならば、由々しいことですが」
と縻竺も真剣な口振りになる。
「ええ。近いうちに再び侵攻してくると思います。」
と陳登は言った。
その後、陳登は、曹操軍の再侵攻に備えるべく、陶謙にいくつかの献策をしているが、縻竺の口添えを得ても許可されたのは、兵力の増強ぐらいであった。
これは、陶謙が、楽観主義者だったわけではなく、曹操が再び攻めて来るなどとは、考えたくもなかったのだろう。
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