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曹操軍に攻められていた時は、怖れて為す術も無かった陶謙であるが、それが引き揚げたとなると、ほっとすると同時に、曹操を激しく憎悪するようになる。
陶謙配下のある部将が、陶謙の憎悪を利用して、取り入って出世しようと思い立つ。
その方法は、当時、瑯邪という土地に隠棲していた、曹操の父親を殺害するというものであった。
陶謙は、その計画を事前に知っていたが、止めていない。
そして、その計画が実行されたのだ。
陳登は、その話しを聞くや、
「何と愚かな、これでは自ら曹将軍の兵を招くようなものではないか。」
「戦場で負けた報復を武器を持たぬ者に向けるとは、道義に悖るではないか。無事に済むはずがない。」
と慨嘆した。
父親の悲報に接した曹操は、色を失う。
そして、父親を害したのが徐州兵だと知るに及び、激怒して、再び徐州征伐を決定する。
ここに至って、陶謙もようやく事態を悟った。
実のところ、陶謙は、曹操から問責を受けたら、
「部下が勝手にやったのだ。」
と釈明して、父親殺害の犯人を引き渡せば済むと考えていた。
まさか、問答無用で攻めて来るとは思わなかったのだ。
完全に意表を突かれた陶謙は、怖れ慄いて全てが手につかない様子であったが、かろうじて、各地に救援を求めた。
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