経世の志

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少年の陳登には複雑な政情は理解出来なかったかもしれないが、苦しむ多くの人々を目の当たりにして、世の衰微を肌で感じていたのだろう。 現に、日々の暮らしさえままならず、冷たく路傍に横たわる人の亡きがらなど、幾度も見ている。 一度などは、徐州へ用談に行く父に連れられて旅する道すがら、野盗の群れに焼かれた村を見た。 焼け焦げた家屋の臭いに混じって、肉の腐臭が漂っていた。 遺体は野ざらしのままだった。 徐州の人の話しでは、野盗が出没するので、埋葬に行くことすらままならないということだった。 しかも、村を襲った野盗も元は農夫だったという。 多感な陳登少年は、そのような光景に出会う度に、身を裂かれるような思いで考える。 「何故なのだ。何故こんなことが起こるのだ。」 周囲の大人も、この問いに明確に答えることが出来ない。 ただ、眼前の現実を嘆くだけだ。
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