序章-赤い月-

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灰色にくすみ不気味な雰囲気を漂わせるこの古びた屋敷は、元々中流貴族のクルージュ家のものだった しかしある日一家は何者かに惨殺され、その現場が屋敷内だったこともあって誰にも引き取り手がなく、ならば喜んで、と結局長年庭師と屋敷の管理人として仕えていたマーレイが此処に住む事になった そしてこの日も屋敷の見回りと庭の手入れをして、その重い腰をやっとこさ落ち着けて一服しているところだった 何を考えるでもなく、ただぼぅっとしていると、その遠くなった耳にはっきりと何か複数の物音が2階から聞こえ、マーレイは驚いて思わず腰を浮かせた なぜならマーレイの住んでいる部屋は一階の玄関のすぐ右に入った所なので、何か音が届くことは滅多にないのだ 物音を不審に思ったマーレイは、警戒心を強めながら重い腰を再び上げ、傍らで杖をつきながらほうきを持って部屋を出た .
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