第1章  

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クラスの連中で,こいつの雰囲気がいつもと違うなどと気づいているヤツは1人か多くても2人だろう。そのうちの1人が誰かは確実に名指しできる。 つまり俺だ。 入学以来俺の背後に居座り続け,放課後になっても面を付き合わせているおかげで気づいたようなもんだから俺以外のだれも気づかなかったとしても無理はない。 おとなしいとはいえ森羅万象に向かって挑戦し続けているような目つきは健在だし,いったん動き出せば満足するまで止まらない行動力もそのままだし。 先月の終わり頃におこなわれた校内百人一首大会では惜しくも2位にとどまったが今月の頭にやった校内マラソン大会では堂々の優勝を飾り,ちなみに百人一首の1位は長門,マラソンの2位も長門だった。 ようするにSOS団の団長と読書係が文武そろってワンツーフィニッシュを決めるという,いったんこの団は何をしたいのか全校生徒があらためて首をひねったことだろうが,かく言う俺もそのうちの1人だ。 1つだけ理解可能なことがあるとしたら,これまでの経験上,ハルヒがこんな顔と空気を作り上げている時は次はどんな悪巧みを思いつくべきか考えていると見て間違いないってことである。 そして考えついた瞬間に実にいい笑顔へと切り替わることも絶対確実だ。 そうじゃなかったときが思い出せないからな。 あったっけ? 俺の脳内にある歴史の教科書にハルヒが恒常的におとなしくしたまま引っ込んでいたなんていう年表が。 一時的な平穏は,次に来る大津波を予言する確かな前兆に他ならない。 いつもそうだったようにさ。 さて… 寒気もピークに達する真冬の終盤,今は2月の初頭である。 いろいろあった去年から年を越えて,すでに1ヶ月が経過している。 時間が加速しているような気がするのは,年明けしょっぱなの1月にだってそれなりなことをやっていた自覚があるからだろう。
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