内緒、秘密/仁王

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「仁王て、どこ出身なのさ。」 「さて… どこじゃったか…。」 謎多き男、仁王雅治。 開いたいわゆる女性ファッション誌、特集は『謎めいた男性がモテる謎』、とある。 素性が分からない方が恋愛は燃えるらしい今時、理解に苦しむのは私だけ? 「方言からして… 長崎とか!?」 「今日の課題は何だったかのー。」 人の部屋に来ておきながら、自分ん家かってツッコミ入れたくなるほどの寛ぎよう。 さっきから私のベッド上を占拠andマー君(猫ちゃんのぬいぐるみ)で遊んでるこの人が、テニス部で詐欺師なんて恐れられてるとは到底思える訳もない。 「結局そうやってはぐらかす…分かんないことだらけだー!!」 喚いた勢いでそのまま後ろに体を倒した。バタっと音を立てた背中が軽く痛い。 ベッドに俯せの仁王がひょいっと身を乗り出して私に焦点を当てる。 「ほれほれ…」 何やら私の手元の雑誌を指差す九州男児(仮定)。 何かと目をやると、特集の文字がでかでかと主張していて。 ─謎めいた男性がモテる謎 …謎めいた男性ねー… ん? 指差す方向を雑誌から自分の顔へと動かすと、やらしくにやっと仁王は笑った。 「…じ、自分とでも言いたいのかーっ!」 「十分俺に当てはまると思うがな… ふむ、謎が多いほど魅力的か。なかなか当たってる。」 「このナルシストめ! 退治してやるー!!」 頭に敷いていたクッションを思いっきり投げたらあっさりキャッチされた。 「そんなことして… マー君がどうなってもいいんかの。」 「わー、マー君だけはどうか!勘弁して!」 人質に取られたマー君は相変わらず可愛い、とか呑気に考えてると、彼は急に真面目な顔になった。 「…一つだけ、 おまえさんに内緒話してやろう。」 俄然興味津津の私。単純。 「俺… おまえを好いとお。 じゃけ、付き合いたい。 返事は?」 まさかで聞かされた秘密はかなり強引な告白で。 私の気持ち知ってるからさらっと言えてしまう彼に少しの悔しさ。 「マー君… 私の気持ちの代弁者。」 私の人差し指の先の猫ちゃんが仁王を見上げている。 「なるほど、 それでマー君か。 ずっと気になっとった。」 嬉しそうに笑う顔が、いつも見せるクールな表情とギャップありすぎで少々ドキッとした。 時たま見える真実がたまらないのかも。 もう一回、特集熟読しとこ。 *END
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