始まり

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通話ボタンを押し 耳に近づける 「夏穂ー?」 「ん?」 自分の名前を呼ぶ 彼女の高い声とは違う 低い、それでも優しい声に 夏穂はぶっきらぼうに返事をする 「飯食った?」 「食べたよ、母さんの手作り弁当。久しぶりだったせいかなんかやけに気合い入ったやつ」 小さくため息をつき 呆れたように答えると 電話の向こうで笑ってる声が聞こえた 遠野 夏穂(とおの かほ)の 父はに単身赴任中で 月に一度会えれば良い方だ しかしそれは夏穂と 2つ下の弟にだけ 言える事であり 母は何かと理由をつけて 父の所に行く 仲が良いことは良いことだが 中学生の子供を置いて 2週間程いなくなるのには さすがに困っている 母に文句を言った事もあったが 泣かれて以来 何も言えない そんな生活を3年半も 続けていたら 嫌でも家事を覚え 今では母よりも出来るようになった その為母が家事を する事は年に数回しかない (父の所ではやってるらしい…) だからお弁当を作って もらうなんて殆ど無くて 本当は少し嬉しい
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