3人が本棚に入れています
本棚に追加
通話ボタンを押し
耳に近づける
「夏穂ー?」
「ん?」
自分の名前を呼ぶ
彼女の高い声とは違う
低い、それでも優しい声に
夏穂はぶっきらぼうに返事をする
「飯食った?」
「食べたよ、母さんの手作り弁当。久しぶりだったせいかなんかやけに気合い入ったやつ」
小さくため息をつき
呆れたように答えると
電話の向こうで笑ってる声が聞こえた
遠野 夏穂(とおの かほ)の
父はに単身赴任中で
月に一度会えれば良い方だ
しかしそれは夏穂と
2つ下の弟にだけ
言える事であり
母は何かと理由をつけて
父の所に行く
仲が良いことは良いことだが
中学生の子供を置いて
2週間程いなくなるのには
さすがに困っている
母に文句を言った事もあったが
泣かれて以来
何も言えない
そんな生活を3年半も
続けていたら
嫌でも家事を覚え
今では母よりも出来るようになった
その為母が家事を
する事は年に数回しかない
(父の所ではやってるらしい…)
だからお弁当を作って
もらうなんて殆ど無くて
本当は少し嬉しい
最初のコメントを投稿しよう!