2 冷凍庫より冷たい教室

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月美は担任に昨日の事を報告した。 しかし、担任は何も言わずに話を聞くだけ。 結局、虐めを止めさせる具体策は何もでないまま「もう少し様子を見る」と言って終わった。 教室に戻ると、そこにはびしょ濡れの久遠がいた。 「ちょっ!?どうしたの、久遠さん」 駆け寄るが、久遠は床に膝をついたままうなだれている。 「そいつ、寝癖すごいじゃん?だから、直してやったんだよ」 あまり口を聞いた事のない、真面目そうな男子が言った。 思えば、月美は彼が机に向かう姿しか見たことがない。 彼は眼鏡に手を添え、ニヤニヤしている。 彼の隣にいる男子も女子も同じようにニヤニヤしている。 「なんてことを…謝りなさい!」 月美は、高校に入学して初めて叫んだ。 それとほぼ同時に誰かが月美に水をかけた。 爆笑。 教室中に下卑た笑いが響く。 月美は、学友である菜穂子とリカを見る。 リカは心配そうにこちらを見ているが、菜穂子はこちらを見ようともしない。 そこへ、担任が現れた。 「なんだ、なんで教室が水浸しなんだ?」 誰かが言う。 「遠山さんと久遠さんが、バケツひっくり返したんです」 担任と月美の目が合う。 「そうか…遠山、久遠。早く、片付けなさい」 信じられない一言だった。 見てわからないのか? いや、わかっていたのかも知れない。 「掃除が終わりしだい…」 担任が言いかけてた所で、誰かがドアを乱暴に開けた。 そして、担任はぶっ飛ぶ。 「よ、陽史君!?」 そこには陽史がいた。 「迷子になってなぁ…ウロウロしてたら、偶然通りかかったんだが…大体は聞いていたし、見りゃわかる。月美ぃ~こいつら、全員顔面ピカソにして良いよな?」 今にも暴れ出しそうな陽史。 彼は、月美の身を案じてこっそり様子を伺っていた。 見つからないように、授業を抜け出しちょくちょく見に来ていたのだ。 しかし、陽史は暴れだす前に他の教師たちに取り押さえられた。 顔面ピカソになった教師は他の教師に運ばれ、残った教師が連絡事項を告げる。 「明日から、1週間は校舎の改装工事で休校だ。来週からは通常通りに登校するように…以上!」
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