1 青い空に見捨てられた

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バットに当たった野球ボールが、青い空へと飛んで行く。 俺は幼なじみの月美(つきみ)にガッツポーズをして見せた。 すると、興奮したのか月美は大声で叫んだ。 「陽史(ようじ)君、ホームランよ!」 そんぐらい、俺だって見りゃわかるよ。 中学校、三年の夏。 まだ、あの時の月美は眼鏡をかけていなかった。 まだ、この時の俺は野球選手を目指していた。 まだ、あの時の俺たちは…互いに訪れる不幸を知らなかった。 俺は高校に野球特待生として迎えられたのだが、1年の三学期に交通事故にあってしまい…肩を負傷。 遠投できなくなっただけでなく、バットも上手く振れなくなっちまったもんだから…グレる事にした。 でも、俺なんかより月美の方が悲惨だった。 2つ年上の姉さんが死んじまった。 虐めを苦にした飛び降り自殺。 いや…違う。 自殺じゃない。 殺されたんだ。 そして、月美は…それが原因で心に一生消えることのない傷を負った。 怒り、悲しみ、絶望 憤り、憎しみ、殺意 終わりに向かって、始まり…始まり…
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