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バットに当たった野球ボールが、青い空へと飛んで行く。
俺は幼なじみの月美(つきみ)にガッツポーズをして見せた。
すると、興奮したのか月美は大声で叫んだ。
「陽史(ようじ)君、ホームランよ!」
そんぐらい、俺だって見りゃわかるよ。
中学校、三年の夏。
まだ、あの時の月美は眼鏡をかけていなかった。
まだ、この時の俺は野球選手を目指していた。
まだ、あの時の俺たちは…互いに訪れる不幸を知らなかった。
俺は高校に野球特待生として迎えられたのだが、1年の三学期に交通事故にあってしまい…肩を負傷。
遠投できなくなっただけでなく、バットも上手く振れなくなっちまったもんだから…グレる事にした。
でも、俺なんかより月美の方が悲惨だった。
2つ年上の姉さんが死んじまった。
虐めを苦にした飛び降り自殺。
いや…違う。
自殺じゃない。
殺されたんだ。
そして、月美は…それが原因で心に一生消えることのない傷を負った。
怒り、悲しみ、絶望
憤り、憎しみ、殺意
終わりに向かって、始まり…始まり…
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