1 青い空に見捨てられた

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「勘弁してくれよ…知らなかったんだよぉ、あんたが中森高校の『無表情魔王』日向陽史だって」 無表情魔王…あまり笑わない俺につけられたあだ名だ。 視界に映っている今の風景は、喧嘩売ってきた連中の5人中4人が倒れている。 全員が顔面ピカソだ。 言うまでないが、俺がやった。 最後に残した命乞いしているリーダーに質問する。 「もし、助かる方法があるとしたら聞きたいか?」 「な、なにすりゃ良いんだ?金か?」 「なんてこたぁねぇよ…こいつら見捨てて逃げれば追いかけねぇ。まぁ、そのぶんこいつらの顔面のピカソは更に芸術性を増すんだがな」 「な、なんだ…そんなことかよ!なら、話は早いぜ」 そう言うと、奴は俺に向かって拳を振るう。 当然のようにそれをかわそうとしたが、頬をかすめた。 しかし、カウンターで放った俺の拳が奴の顔面をとらえる。 どこの歯か知らねぇが、血まみれの歯が地面に転がった。 これで、みんな揃って顔面ピカソだ。 「クソ弱ぇ…が、少しは男らしいところがあるな…お前ら、もう少し相手見て喧嘩売りな」 5対1の喧嘩、圧勝。 家に帰ったところで面白いこともない。 さて、どこにいこうか。 街をブラブラしていたら、後ろから俺を呼ぶ声がした。 「陽史君!」 振り替えると、見慣れたロングヘアーの眼鏡をかけた女子高生がいる。 身長は、ざっと160くらいで脚が長くてスタイルの良い美人。 俺の幼なじみ、遠山 月美だ。 ちなみに、俺は身長188で月美の二倍近く肩幅がある…大男だ。 中学の頃より更に背が伸びたが、当時から俺たちは美女と野獣とか言われてた。 「なんだ、塾の帰りか?前にも言ったが、あんまり俺に話かけんなよ。不良と仲良く喋ってるの教師に見られたら内申に響くぞ」 せっかく人が忠告しているのに、それを無視して月美は俺の腕に手を回す。 「その傷、また喧嘩したの?言っておくけど心配してるのは私の方なんだからね…一緒に帰ろう」 家が近所で、同じ小学校でも隣の席になっただけ。 そんな些細な事から始まった交遊関係は、今もなお色褪せる事なく続いていた。
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