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「勘弁してくれよ…知らなかったんだよぉ、あんたが中森高校の『無表情魔王』日向陽史だって」
無表情魔王…あまり笑わない俺につけられたあだ名だ。
視界に映っている今の風景は、喧嘩売ってきた連中の5人中4人が倒れている。
全員が顔面ピカソだ。
言うまでないが、俺がやった。
最後に残した命乞いしているリーダーに質問する。
「もし、助かる方法があるとしたら聞きたいか?」
「な、なにすりゃ良いんだ?金か?」
「なんてこたぁねぇよ…こいつら見捨てて逃げれば追いかけねぇ。まぁ、そのぶんこいつらの顔面のピカソは更に芸術性を増すんだがな」
「な、なんだ…そんなことかよ!なら、話は早いぜ」
そう言うと、奴は俺に向かって拳を振るう。
当然のようにそれをかわそうとしたが、頬をかすめた。
しかし、カウンターで放った俺の拳が奴の顔面をとらえる。
どこの歯か知らねぇが、血まみれの歯が地面に転がった。
これで、みんな揃って顔面ピカソだ。
「クソ弱ぇ…が、少しは男らしいところがあるな…お前ら、もう少し相手見て喧嘩売りな」
5対1の喧嘩、圧勝。
家に帰ったところで面白いこともない。
さて、どこにいこうか。
街をブラブラしていたら、後ろから俺を呼ぶ声がした。
「陽史君!」
振り替えると、見慣れたロングヘアーの眼鏡をかけた女子高生がいる。
身長は、ざっと160くらいで脚が長くてスタイルの良い美人。
俺の幼なじみ、遠山 月美だ。
ちなみに、俺は身長188で月美の二倍近く肩幅がある…大男だ。
中学の頃より更に背が伸びたが、当時から俺たちは美女と野獣とか言われてた。
「なんだ、塾の帰りか?前にも言ったが、あんまり俺に話かけんなよ。不良と仲良く喋ってるの教師に見られたら内申に響くぞ」
せっかく人が忠告しているのに、それを無視して月美は俺の腕に手を回す。
「その傷、また喧嘩したの?言っておくけど心配してるのは私の方なんだからね…一緒に帰ろう」
家が近所で、同じ小学校でも隣の席になっただけ。
そんな些細な事から始まった交遊関係は、今もなお色褪せる事なく続いていた。
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