2 冷凍庫より冷たい教室

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期末試験の結果発表。 「や、や、やったぁあぁ1番だあぁぁ」 教室に張り出された結果に、皆が驚いた。 1久遠 鏡子 2遠山 月美 「凄いわね、久遠さん」 月美は、純粋に彼女を褒め称えた。 「ああありがっとう」 表情はうかがえないが、喜んでいる様子。 しかし、他の生徒たちには面白くない結果。 誰かが言う。 「ろくに喋れないくせに、大したもんね」 それが口火となり、少しずつ久遠に対する嫌がらせが始まった。 「き、きょうかしょ…」 「久遠さん、教科書忘れてきたの?私の見せてあげるね」 月美は席をくっつけて、教科書を見せる。 それから数時間が過ぎ、下校の時間となった。 「月美、一緒に帰りましょう」 月美の学友である、草野 菜穂子(くさの ナホコ)と木田 リカ(きだ りか)の二人が声をかけてきた。 菜穂子は身長は150くらいで、そんなに背は高くない。 長い髪を後ろで結って、前髪はピンで止めている。 リカは対象的に背が高い。165くらいはある。 髪は肩につかないくらいのショート。 一緒に帰ることにした月美は、正面玄関で立ち尽くしている久遠を見つけた。 「久遠さん…どうしたの?」 「く、くくつがないのぉぉぉ」 下駄箱に靴がない。 「一緒に探してあげるから…取り乱さないで」 月美は久遠の靴を探す。 しかし、見つからない。 「塾あるから先に帰るね」 菜穂子は先に帰り、三人になる。 リカは嫌そうな顔をしたまま、靴を探すのを手伝う。 外は暗くなってきた。 「どどどうしょぅ…」 今にも泣き出しそうな久遠。 「私…靴を買ってきてあげるわ。サイズはいくつ?」 問いかける月美をリカは黙って見つめる。 「でもぉ…わわわたしぃ…きょぅ、おさいふもなくしちゃったたたたの」 「どこで?」 「がががっこうくるときは…あったのぉぉぉ」 まさか、盗まれたのでは? 月美もリカも、そう思った。 「とにかく、行ってくるわ。お金は私がたてかえておくから…ここで待っていてね」 そう言って、月美は校舎から出る。 そこへ偶然、バイクに乗った陽史が通りかかった。 「月美…血相変えて、どうした?」 「なんでもない」 通り過ぎようとする月美の腕を、陽史は掴む。 「その面がなんでもないって面かよ…話せ」 月美は陽史に事情を説明した。 「そうか…つれてけ、俺が久遠ってやつを送っていってやるよ」
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