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月美が陽史をつれて校舎に戻ると、そこにはリカだけがいた。
「あ、月美…久遠さんの靴ね、見つかったから先に帰ったよ。カッターかなにかでズタズタにされてたけど」
陽史はリカを睨む。
「虐めか?」
あまりの迫力にリカは何も言えず、頷くことしかできない。
ただでさえ強面の陽史の顔が、さらに険しくなる。
「わ、わたしもう帰るね!」
逃げるようにリカは二人の前から立ち去る。
バイクを押しながら、陽史は月美に問う。
「久遠ってやつは、虐められてるのか…明日、俺がお前の教室にいる奴ら全員にヤキいれてやる」
「暴力じゃ何も解決しないわ…大丈夫よ。私、明日先生に言うから」
陽史はとにかく月美を案じた。
「それやったら、お前が次の標的になるんじゃねぇか?」
「そうなったら、自力でなんとかするわよ」
陽史は、バイクに股がり予備のヘルメットを月美に渡した。
「乗れよ。親父さんたち、心配してんだろ」
頷いた月美は、ぎゅっと陽史の背中にしがみついた。
初めてのバイクが怖いのか…明日に不安があるのだろうと思いながら陽史はバイクを発進させる。
家の人に見られると面倒なので、近くで降ろす。
「陽史君」
帰ろうとした陽史を月美が呼び止めた。
「どうした?」
街灯に照らされた月美は、とても不安そうに見える。
「なんでもない…送ってくれて、ありがとう」
作り笑顔を浮かべた月美に手を振り、陽史は走り去った。
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