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「いや~スマンスマン。かなり早く仕事終わったもんだから、ついフラッと行ったら……ね?」
あれだけ山盛りだったドーナツがあと一口分になった頃、ようやくオッチャンこと武藤さんが満面の笑みでやって来た。
人を待たせておいて、何だその顔は。
というか、幾ら勝ったんだ。
大紀の隣に座ると、武藤さんの前に大紀の手が伸びた。
何かを催促するかの様に手の平を大きく広げているトコロから察するに、先程二人で考えた罰以外にも勝ち分を奪うつもりなのだろう。
「オッチャン、お小遣い欲しいのねん」
案の定、だ。
一瞬武藤さんの目元が引きつったが、直ぐにいつもの優しい顔つきに戻り、差し出された手を握った。
「お小遣いかい。よしよし、これをあげよう」
「わーい、飴ちゃんだ~!」
微笑ましいというか、何とも馬鹿馬鹿しいやり取り。
思わず吹き出しそうになり、口元を押さえるが、どうにも肩の震えだけは止められない……アンタらアホ過ぎる。
「……もう、いいから行こ……ライブぁ……練……習しな……」
必死に笑いを堪えてるせいか、声が震える……一度大きく深呼吸をしなければ。
「てかオッチャン……お小遣いよりこの前貸したAV返して欲しいんだけど」
「いけね。忘れてた」
盛大に吹いた。
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