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光朗その笑顔に咲は頬を紅潮させ、少し恥ずかしそうに目を逸らした。
そんな反応さえ愛おしく思えて、光朗は咲を抱く手に力を込めた。
そうすれば、咲は光朗の腕の中から逃れようとモゾモゾと動く。
「こうされるのは、嫌か」
耳元で囁かれた光朗の低くて少し沈んだ声に、咲はふるりと睫毛を震わせる。
「あなた様……」
咲はユルユルと頭を振った。
決して、咲は光朗に抱かれることが嫌なわけではない。
咲と光朗の間には、まだ子供はいない。
加えて咲は若く、箱入り娘と言っても過言ではない育ち方をしてきた。
つまりは、こういった経験が皆無に等しいために慣れておらず、少し恥ずかしくなってしまうのだ。
なかなか腕の力は緩まず、咲は困ったように光朗を見上げた。
──刹那、二人の唇が重なる。
優しく、桜が空を舞うような軽い口付け。
子供同士がするような拙いものだが、咲は顔を夕日のように真っ赤にした。
「っ、あなた様っ」
咲は困ったように眉を下げ、光朗の胸をトンと叩いた。
光朗は笑い、咲の頭をソッと撫でる。
割れ物を扱うように、ゆっくり、優しく。
そうされてしまえば、抗う術など持っていない咲は、せめて赤く色づいた顔を隠すために、光朗の胸に顔を埋めるのだった。
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