55人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
3年、住んでいた部屋を玄関前の廊下から眺める。
脇にある浴室も、前方のドアからのぞくリビングも。
どこもかしこも思い出で溢れていた。
これから僕の取る行動への後ろめたさが、足を廊下へ縫い付ける。
それでも僕はここから出なければいけない。
過ごした思い出が頭の中を過ぎる。
僕は頭を大袈裟に振ってそれを霞ませ、その勢いでスニーカーを履いて部屋を出た。
合鍵で鍵をかける。
ドアノブの下にある、重厚なドアと一体化した郵便受けの入れ口と、しばらく睨み合った。
鍵を冷えた手で握る。
今なら、後戻りできる。
でも、しない。
郵便受けを開いて、鍵を投げるように入れた。
ガチャン、と音がして受け皿と鍵がぶつかった。
その音が思わず大きかったこともあり、後ろめたさに僕は走り出した。
最初のコメントを投稿しよう!