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その後も亮ちゃんは楽しい話をいっぱいしてくれたけど、僕は正直上の空やった。
店を出ると、酔いでほてった頬に夜風があたり心地よかった。
『‥なぁ、丸。』
「ん?」
ふと立ち止まった亮ちゃんを振り返る。
『まだ、丸は‥その、多駒ちゃんを、想い出にできてないん‥?』
眉間に皺を寄せ言いにくそうに聞く亮ちゃんの鋭い質問に、僕は亮ちゃんから目を逸らすことしか出来なかった。
『ごめん。‥でもっ、でもな?丸、』
「わかってるっ‥。わかってるよ、亮ちゃん‥」
わかってる。多駒がもうこの世にいないことも。
もう想い出にしなくちゃあかんことも。
勿論、それらから逃げちゃあかんことも‥。
全部、わかってんねん‥。
亮ちゃんとバイバイするとき、亮ちゃんはさっきと同じ顔で俯いとった。
「大丈夫。俺はもう、大丈夫やと思うよ‥?」
とぎれとぎれに言ってはみたものの、スッキリなんかしなくて逆にモヤモヤが募った僕のココロ。
亮ちゃんはそれを聞いて納得したんか、懐かしいはにかみ笑顔を見せつつ帰って行った。
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