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叩き込まれた知識を
さかのぼり、確か…と
独り言をつぶやきながら
俺の足はこの国で最も大きい
広場へと向かっていた。
サクサクと雪の積もった
広場に足を踏み入れ
あたりを見渡した。
誰もいない、白銀の世界
色を持つのは
自分だけ…
葵は抱え込むように
自分の肩を抱き、身震いをした。
(こんなに雪が積もってちゃ、
誰も外に出ねェのかな…)
今頃、家の使用人やらが
俺を探していることだろう。
簡単に見つかったんじゃ、
ここまで来た意味がない…
葵は身を隠せる場所がないか、と
うろうろと広場を歩き始めた。
「うぁー…寒ィ…、こんなとこに隠れる場所なんてあるわけねぇか…」
さすがにこの寒さの中ずっと
隠れる場所を探しているのも
面倒になってきたので
ふらふらと広場の奥にある
花壇の縁へと腰を下ろす。
憂鬱な気分を
吐き出すかのように
はぁっと白い息を吐きながら
ぼぅっと灰色の空を見上げた。
「いっそのこと、全部
悪い夢だったらいいのに…」
有り得もしないことを
呟きながらゆっくりと目を閉じる。
寒さで意識が朦朧とし
手足の感覚がなくなってきた。
それでも葵は
体を温める素振りもせず、
じっとそこに座っていた。
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