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――――何百年も昔。
ある大きな世界。
暴風の中、叫び声が聞こえた。
『早く・・・早く・・・早く!』
また、別の叫び声が聞こえた。
『だがっ・・・・お前が・・・』
叫んでも暴風に掻き消さていく。
『いい・・いいから・・・早く!』
伸ばした手は、届かない。
『お前はっ・・・・』
どんどん引き離されてゆく。
どんなに叫んでも、どんなに手を伸ばしても、もう叶わないのだ。
『・・・・もう・・・駄目みたい・・・だから・・・』
未来が消えてしまったのは知っていた。
この身が無くなる事も知っていた。
だからこそ、強く願ったのだ。
だから、貴方は・・・・
『だから・・貴方は・・生きて・・・・』
叫び声は最後には優しい言葉に変わっていた。そして、視線を交わし微笑んで。
『ありがとう・・・・彗・・』
そこで、途切れた。
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