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理沙が文集を手に取ったのと時を同じくして、坂田博人もまた彼女との思い出を振り返っていた。
中学三年の夏休み、理沙と博人は星を観察するために長野にある彼の別荘にいた。
時刻は午後十時、二人は天体望遠鏡と双眼鏡とを交互に覗き、流れ星を探していた。
「なぁ、あの星見てみろよ。」
30分ほど経った時、博人は理沙を呼び、自分が発見した星を指差した。
「なに?牡羊座がどうかしたの?」
理沙はなんでもないことのように言い、首を傾げた。
「あの星、二つ寄り添っているように見えるだろ?あれに俺達の名前を付けよう。」
理沙は笑いながら首を振った。
「あれには、ハマルとシェラタンという名前がもう付いてるわ。」
その答えに博人は、分かってないというように溜息を吐くマネをして言う。
「いつか新しい星を見つけるまでの代わりだよ。それまであの星はヒロとリサという名前にしておこう。だから、あの星座はもう牡羊座じゃない、恋人座だ。」
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