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ピ…ピ…ピ…
突然携帯が鳴り出し、博人の意識は現実へと引き戻された。
《日本軍、明日出航》
彼は携帯をマナーモードに設定し直し、再び思い出を振り返った。
大学一年になる直前、二人は夜桜を見る為に近所の公園にいた。
「ねぇ、夜の公園もいいよね。」
「それに綺麗だろ?この桜は温暖化のせいで夜にしか咲かないらしいぜ。」
そう言いながら、彼は一夜で散る運命の桜を
労わるかのように幹を撫でる。
「桜も、星も、本当に綺麗。」
理沙はお世辞でなく本心から感動しているようだった。
「また来年、この桜を見に来よう。」
博人が言うと理沙は、もちろんと言うように頷いた。
「そうだ!星が輝くのはどうしてか、そろそろ教えてよ。」
「あの歩道橋に行く時に教えるさ。」
そう言って彼は笑い、二人は家へ帰った。
しかし、それから九カ月後に別れを切り出されるまで答えを教える機会は訪れることは無かった。
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