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放課後、理沙は坂田に尋ねた。
「なんで、あそこまでしてくれたの?」
「それが正しいことだと思ったからさ。」
それだけ言うと彼は走り去った。
その年の夏、理沙は坂田を自分のお気に入りの場所に呼び出した。彼女が星を観察するためによく来ている歩道橋だ。
「あのさ、こんな夜に話って何?」
彼は尋ねた。理沙は答えようとするが緊張してなかなか声に出せず、さらに、ようやく出た言葉も風によって掻き消されてしまっていた。理沙が想いを伝えるのを諦めかけたその時、彼女にとって思い出深いメロディが流れてきた。そのメロディに背中を押されたのか理沙は決心を固め、はっきりとした口調で言葉にした。
「私の夢のために必死で戦ってくれた、あの時から好きでした。付き合って下さい!」
突然の告白に坂田は驚いていたが、すぐに笑顔になり、答えた。
「こんな僕でよければ、よろこんで。」
あまりに真面目過ぎる答え方に二人とも同時に笑った。しばらく笑った後、坂田は空を見上げ、思い出したように呟く。
「なぁ、岩崎。星が夜に輝く理由分かる?」
理沙は得意顔で答える。
「それは、核融合によって生じるエネルギーが放出されて輝くのだよ、ワトソン君。」
すると、坂田は優しく笑って言う。
「そういう物理的なことじゃなくて、もっとロマンチックな答えだよ。まぁ、答えは今度ここに来たら教えるよ。」
そうして二人は各々の家に帰った。
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