序章:旅立ち

9/11
前へ
/97ページ
次へ
「な、何いきなり謝ってんのよ!?」 さすがに予想外だったのか、リリアが慌てる。 「寂しかったんだよな。一緒に暮らしてきた仲間が先に選ばれて旅に出て。しかも俺が遅れたせいで怒らせちまった」 ショウはリリアの頭をごしごしと撫でる。リリアは少しうつむいて、ぼそりと言った。 「んなんじゃ……よ」 「え?」 「そんなんじゃないわよ!ただ、ただ……不安だったの。マスターになる人が、ヒトカゲなんか……い、いらない、フシギダネやゼニガメが……よ、よかったって言うんじゃないかって」 後半少ししゃくりあげながら、リリアは告白した。 ショウは、リリアを撫でる手を止めずに返す。 「それも、俺が遅れたせいだ、済まん。でも、仮に俺に選択する権利があったとしても、きっと君を選んだよ」 「ほ、本当?」 最初の勢いは何処へやら、リリアは弱々しくすがるようにショウに聞いた。 「ああ、本当だ。だって、こんなにかわいいんだから」 リリアは、赤くなった頬を隠すためにぷいとそっぽを向いた。 「あれ?怒った?」 「怒ってない」 「じゃ、どうして目を合わせてくれないんだよ?」 「う、うるさい!もう連れて行きたいなら連れていけばいいじゃない!」 ショウはため息をついた。まあ何はともあれ、ご同行していただけるようだ。 「あ、あと……」 「?」 やれやれと思っていると、リリアがまた話しかけてきた。 「さっきの、萌えもんは『家族』っていうの、あたしはとってもいいって思ったから」 それだけ言い残して、自分からボールに戻ってしまった。
/97ページ

最初のコメントを投稿しよう!

72人が本棚に入れています
本棚に追加