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「まぁ~!見て、パパ!窓から海辺が見えるわ!!」
「素敵だねぇ~、ママ!」
大きな窓のカーテンを開けて、両親がミュージカル並みに手を取り合っている。
彼らの眼下に広がるのは、初夏の太陽にキラキラ光る海。
……ただ、残念なことにこの光景は、引っ越してきた昨日にも見たものだ。
「樹、花!2人もここに来て見てごらん!」
満面の笑顔を浮かべて振り向く父親を見ながら、ボクはパンを頬張って、
「……うん。ボクは後でいいよ」
小さく答える。
「どぉしてよ?この海辺のマンションはパパとママの夢だったのよ!?さぁ、花ちゃんも一緒に……」
ママの声に、ボクの左隣に座った女の子は無表情のまま、
「……浮かれすぎじゃない?」
ボクと全く同じ顔でそう呟く。
ママは思い切り心外、といった様子で頬を膨らませながら、
「もうっ!どうしてアタシたちの子供なのに、こんなにテンションが低いのかしら?」
「まぁまぁ、ママ。僕らに似て可愛いからいいじゃないか……」
ハッハッハ、と笑う2人は、丸っきり安いホームドラマの夫婦そのもの。
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