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「どうだい、良い眺めだろう。今、世界中が幸福に包まれている……こんな良い日は無いと思わんかね?」
「そうだな……」
正直、目の前に広がる沢山の光に感動したのは確かだ。
自分でも知らず知らずのうちに、そう答えていた。
「だがね、残念な事に中には、この日を祝う事の出来ない子どもたちがいる。そんな彼らに幸福を分け与えるのがわたし、サンタの仕事なんだ。どうだね、やってみんかね?」
やってみんかね……って言われても、なぁ?俺は盗るの専門だし。
「そんな事しても、俺にどんな得があるんだ?メリットの無い事なんて俺はやらねぇからな」
キラキラと雪に光を反射させる町を見つめながら、呟く。
……そう、俺に得の無い事なんて絶対やらねぇんだ。
暫く俺を見た後、サンタはトナカイに下降するよう合図を送ってからまた、俺の方に向き直った。
「良い事をするのに、得にならない事なんか無いんだよ。何が得で、そうじゃないか。…判断するのは自由だが、どうせなら何でもやってから考えた方が良くは無いかい?」
案ずるは産むが易し……ってか?
まぁ、そんなに言うならやっても良い、か?
つか、やらないって言ったら何されるか分かんねぇしな。今度はソリじゃなくて俺が空に飛されたり……考えただけで悍ましい。
「さぁ、どうするんだい?」
いつの間にか、一件の雪の積もった屋根に着地したソリから降りると、サンタは俺に聞いた。
けっ、分かったよ………。
「やりゃ良いんだろ、やりゃあ」
もう、どうにでもなっちまえ!
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