夕闇…シカナル

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選んだ道は、あまりにも浅はかだったかも知れない 自分が消えれば 暁との争いは終わる。 九尾を入れたまま、消えてしまえば 目的は失われ、暁は人柱力を全て揃えることの出来ず 終焉へと向かっていくだろう。 そうなれば、大好きな木の葉は襲われない 誰も、悲しみの涙を流すことはない 「妖狐…ごめんな」 もう一人の 一緒に犠牲になってくれる 友人へ、謝罪を込めて掌をお腹へと宛がう。 『我の事は構わない…どうせ、この身体から出ることは叶わないし…』 すぅっと、自分の隣に 紅い髪をした青年が現れる。 その表情は、怒るでも悲しむでもなく どちらかと言えば、嬉しそうな表情をしていた。 『お前と共に死ねることを光栄に思う』 「……ありがとう」 右腕は既に消えてしまっていたから 左の手で、妖狐の手に自分の手を重ねた。 冷たく、温度の無い手 実体ではないので、仕方が無いことだが まるで死んでいるかの印象に囚われ、胸が苦しくなる。 色んな書物を見たが 結局、九尾を自分から出してあげる事は出来なかった。 出せなかったから、こう言う結果になってしまったのだが 彼自身は『嬉しい』と言ってくれることが 唯一の救いで、心の支えだ。 目の前に広がっていた光も あと数センチになり、もうすぐ暗闇が広がって行くだろう。 里で一番、高い場所に 里人の声は聞こえず、さわさわと風の通り抜ける音だけが聞こえる。 静かな、静かなレクイエム。
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