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「な…なんだ…?急に寒気が……」
ラグナは風が吹いた訳でも無いのに、不意に鳥肌が立ち身震いをした。
現在地は薄暗い洞窟の様な場所。
「まさか幽…いやそんなまさかそんなまさか…ナイナイ」
言葉ではありえないと称しながらも、額と掌からはじんわりと冷や汗を掻いてしまっている。
そう何を隠そう彼の最も苦手なモノは例のアレ。
目に見えるようで見えない物体。
「…ラグナ…」
「!?」
突如、耳に入った己を呼ぶ声。
この空間に自分以外はいない筈だが、誰か先客がいたのだろうか。
「だだだだだ誰だ!?隠れてないで出て来い!!」
思いっ切り動揺しながらも銀髪の青年は大剣を手にし、攻撃に備え身構える。
そして彼の言うとおりに現れた人物を見た瞬間、フリーズしてしまう。
「久しぶりだね…兄さん」
銀髪の青年からは返事がない。
ただのしかばねのようだ。
「兄さん?」
金髪はフリーズしてしまった青年に近寄り肩を揺さぶったり髪を引っ張って覚醒させようと試みたが一向に凍結解除される様子は無かった。
「これは…作戦成功かな?」
自分でフロストバイトした訳でもないのにすっかり固まってしまっている青年を面白げに突きながら金髪は楽しそうに笑う。
だが実際に今の彼の姿を見る者がいたならば、この銀髪でなくとも卒倒するかと思われる。
「ホント、兄さんは幽霊が苦手だからなぁ…やっぱり久々の再会はこのぐらい力入れないと…ね?兄さん」
やはり銀髪からの返事はない。
本格的にただのしかばねのようだ。
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