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ここは幻想郷とは別の世界。
人と人とが争いを絶えず行い続けては無数の死を生み出す灰色の世界。
世界には死体の腐った匂いが充満して草木は枯れ、血の乾いたどす黒い地面が延々と続いている。
人々は睨みを効かせて自分達の縄張りを銃を持って闊歩し、余所者が入ってこようならば即座に射殺せんと言わんばかりの殺気をまき散らしていた。
そんな中、まだ年も若い銀髪の少年が大人達に銃を向けられながら逃げていた。
少年は薄汚れた黄土色のマントを風で飛ばないように押さえつけながら腐敗した大地を駆け抜ける。
目つきは鋭く、時々後方の大人を睨んでは舌打ちをして走る速度を上げる。
「待てーッ!大人しく捕まって我々と共に戦え!!」
「……フンッ……何が共に、だ。…………利用することしか……考えていないくせに……」
少年は大人達の考えを見透かしているらしく、怒りを露わにして呟く。
少年は周りとは異質だった。
今は包帯で隠されているが、両腕には模様のようなものが浮き出ており、その手に触れたモノは例え存在のしないものであってもバラバラに爆ぜた。
周囲の人間はそれを怪異持ちだと恐れ近づこうとはせず、汚い大人達はそれして敵対する者を殺そうとしていた。
それは幼い頃からすでに発症しており、生みの親ですら物心ついた時には消し飛んでいた。
少年は孤独で頼る者もいないままこの死の色の世界を生きてきた。
だからこそ、少年は自分を大切にし、人を信じる心というものを持ち得なかった。
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