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しかしただ爆ぜると言ってもそれは生物に関する上でのこと。
生活には困ることはない。
だが、少年の怪異は爆ぜる両手だけではなかった。
人間とは思えない驚異的な身体能力、さらには口にした言葉を強く想うことで実現させる言霊の力。
そのどれをとっても普通の人間にはない、怪異。
少なくともこの世界にはどれか一つにでも匹敵するような力を持った人間はいない。
故に脅威、そして人間兵器とみなされる。
どの組織、国も少年を恐れ、同時に欲した。
そんな世界に少年は嫌気がさしていた。
どこに行っても追われる身に、安堵できる場所や休息できる場所もない。
少年にとって他人とは、自分の人生を妨げるものにしかならなかった。
「まだ……追ってくるのか……。しつこい、関わりを持ちたくない。関わるな……俺に……干渉するな……俺を自由にさせてくれ……」
どこまでも追いかけてくる大人達に嫌気がさす。
自分を放っておいてはくれない世界に嫌気がさす。
少年は呟く。
「……邪魔になる、妨げになる、嫌気がさす……。殺す、か。……『動けなくなれ』」
その場に少年の言霊が静かに響き渡る。
大人達はそれに従ったようにピタッと立ち止まり、金縛りにあったように指一本動かせない。
少年はその大人達を殺意を込めて睨みつけ、スタスタと近寄っていく。
大人達は改めて感じる怪異の異質感に恐怖し、口を動かすこともできないまま冷や汗を流す。
少年は目の前で立ち止まり、静かに呟く。
「……世界も、人も、俺という異質を求めるから……こんなにも嫌気がさす。俺はただ……静かに、孤独を受け入れてでも……休みたいだけなのに……」
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