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少年は憎しみの視線を大人達に向けると、右腕の包帯をほどきそっと体に触れた。
すると先頭にいた大人は叫び声をあげる間もなくバラバラに爆ぜた。
その肉片が辺りに散りばめられ、ただ死を待つしかない他の大人達はその有り様を目の当たりにして改めて少年の危険性を悟った。
しかし、時すでに遅く、少年は他の大人に歩み寄っていく。
「俺は……お前達みたいに、俺を利用しようとする人間が……憎い。そして……そんな風に差し向ける世界も……憎い。俺には、この世界では……何もかも憎いんだ……」
少年の心の内には憎しみによる闇が蔓延していた。
自分を産んでくれた実の両親さえも憎んでいた。
何故、こんな異質な体に産んだのだと、自分の親さえも憎しみの対象としていたのだ。
しかし、両親はすでに自分が殺していて憎む対象は今はもういない。
だからこそ憎しみが世界に向けられていた。
追いかけてきた全ての大人達を軽々しく肉片に変えると、少年は宛もなく独りになれる場所を求め再び歩き出した。
「次は……どこに行けば、俺は……独りになれるんだ……。独りならば……何も憎むものがないから……安らげる……。俺は……安らぎを探しているんだな……」
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