01-崩壊する日常

2/8
前へ
/10ページ
次へ
「おにぃちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん」 「ぐはっ!!」  妹にダイビングアタックをされて夢から覚める……というシチュエーションは如何なものだろうか。  この現象が一週間も続けば、一人はまたかと嘆き、また別の一人はいい加減止めろと呟く。  そして中には喜んでそれを受け入れるという変わった性格を持った者もいる。  この攻撃を食らった本人、如月(キサラギ)桐谷(キリヤ)も実はそんな変わった思考の持ち主の中の一人であったが、如何せん日が昇り切っていない時刻である午前四時に起こされるのは些か堪えるものがあったようで、その重い瞼をゴシゴシと擦っている。 「ん、どうした優(ユウ)。こんな時間に」  桐谷は自分の上に乗っかっている妹を見上げ、とりあえず自分の部屋に来た理由でも聞き出そうかと考えた。  その実の妹の優――三兄妹の一番下に当たる――が、目尻に涙を浮かべながら桐谷の袖を掴んで放そうとしないところを見ると、恐らくまたいつもの幽霊騒ぎのことだろう……と適当に当たりをつける。  そして、その予想は見事に的中。 「また幽霊がで、でたの。だ、だから、朝まで一緒にいてっ」 「はいはい」  その返答を聞くや否や自分の布団に潜りこんできた優を慰め、頭をそっと撫でる。一見紳士に見えるその光景は、鼻の下がのびた桐谷によって無残にも打ち破られてしまった。  そう、奴はシスター&ロリータコンプレックスの変態野郎だったのである。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

68人が本棚に入れています
本棚に追加