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「昨日コミケで会ったわよね?」
「はい。あ、自己紹介まだでしたね。立花ももかと言います。ももかは平仮名三つでももかです」
ぺこりとお辞儀し立花さんが顔を上げる。これまたこっちがドキッとするほどの綺麗でうっとりする笑みを浮かべて。
「……花之瑞季。よろしく立花さん」
そんな笑みを見せられては、どう対応していいのかわからないあたしは、つい素っ気ない返事で答え返してしまった。
「はい~よろしくお願いします。瑞季ちゃん」
なのに彼女はそんなこと気にしないどころか、にっこりと微笑みで返してきた。親しげにあたしの名を呼びながら。
「ッ……」
胸の奥が痛い。
苦しい……。
これってまさか……恋?
まあ、顔立ちは美人だし、性格もほんわかしてて好意的な印象。ある意味恋しない方がおかしいわね。
って、ちょっと待てあたし。
あたしはそっち系だったの? 百合っ気だったの? 同性愛者だったのか?
いやいや、よく考えろあたし。さすがにそれはないじゃないの。
確かにジャンル的には好きな部類だろうけど、だからと言って自分がそうとは限らない。ってかそうじゃない。
故に自問に対する答えはすべてNOだ。
そもそも恋しない方がおかしいわねって考えた時点で、すでにおかしかった気がするけど……。
「あ、わたしの方はももちゃんって呼んでください」
なんか最初からトップギアねこの子。ってか、自分が同世代の女子をちゃん付けで呼ぶのが想像できない。
基本あたしは同性にはさんか呼び捨てであるが故に。
「……せめて、さん付けか呼び捨てで言わせて」
「なら呼び捨てでお願いします~」
「……ももか」
「はい~」
微笑みを浮かべるももかに、またもやドキッと胸が高鳴る。
あたしある意味重症かも……。
にしても、出会ったばっかりで呼び捨て要求。なんなんだろうこの子?
不思議でならないのだけど、なぜかあたしはももかのことを嫌いになれそうにない。
まったく……謎だらけね。
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