再会と勝負

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「諦めるんですか?」  一瞬、それが誰の声かわからなかった。  振り返る。 「諦めるんですか?」  間違いなくそれはももかの口から出た言葉。そもそも、この場にはあたしとももかしかいないのだから、あたしが出さなきゃ彼女しかありえない。  なのに、あたしは一瞬、それがももかの声だとわからなかった。 「夢を諦めちゃっていいんですか?」  さっきまでの可愛らしい印象は声からも表情からも感じ取れない。どこか大人びたようなももか。  その突然の変わりようが、一瞬“ももか”を“ももか”とわからなくさせた。 「簡単に、諦めちゃっていいんですか?」  より強い言葉が投げかけられる。 「……簡単だって? 簡単じゃないわよ!」  怒鳴るつもりなどなかった。でも湧き上がる感情をこれ以上抑えることができない。 「悩んだわよ! 嫌なほど……たく、さん……たくさん……たくさん悩みまくったわよ!」  体内の汚物を吐き出すかのように、あたしは声を荒げて言い続ける。 「あたしじゃ無理なの! 頑張ったって夢は掴めない。無理だってわかったら……あたしは……あたしぃ……は……」  俯き、感情を抑え込む。  ちょうどいい具合に冷たい風が吹いてくれたお陰で、クールダウンはしやすかった。 「あなたには関係ない。……関係……ないんだから」  吐き捨てるようにももかに言葉を投げる。  ショックだったのか、ももかは俯いたまま微動だにしない。  ごめんね……と去り際に言葉を残して、あたしは出入り口へと足を進める。  あたしから語ることも、返す言葉は最早ない。 「わかりました」  だから彼女がどんなことを言ったところで、あたしは言葉を返さない。 「なら勝負してください」 「はい?」  ……はずだったが、彼女の意味不明な言葉に、思わず素っ頓狂な声で答えてしまう、あたしがいた。
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