もやもやする心

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 今に思えば、なんであの時勝負を受けてしまったのだろって思う。  あたしは言ったはずだ。あなたには関係ないって、はっきりと。だから、こんな勝負受ける必要ないて一切ない。  なのに、受けてしまった自分がいる。  もしかしたら、あたしは夢を諦めきれていないの? だから受けてしまったと?  はっ、我ながら随分と往生際が悪い。  自らの実力がどの程度か味わったのに。  夢から程遠いところに自分がいると知ったのに。  それでもなお、諦めつかないと?  続けたところで待ち受けるのは辛い現実だ。捨てるなら早く捨てた方がいい。  なら、勝って捨てるまで。そう勝てばあたしも、そしてももかも諦めがつく。  それにしてもあの子、意外と策士ね。偶然だとは思うけど、あたしの苦手なところを上手くついてくる。  突拍子や意外性の対応にあたしは滅法弱い。正直どうしたらいいかわからなくなる。  特に勝負事に関しては、自分でも知らず知らずのうちに受けて立っていることが多い。ももかからの挑戦がいい例だ。  わかりました、と納得しておいていきなり勝負を切り出すやり方。  いや、よく考えるとあれは、そもそも納得なんてしていなかったじゃないか。  あの“わかりました”は、あたしの言葉に納得したんじゃなくて、今のあたしに夢を諦めないよう説得したところで、無駄と判断したって意味の“わかりました”だった。  なんで……そこまでするの?  昨日会ったばかりのあたしに。ただあたしの絵が好きなだけなのに……なぜあの子はここまでするの!?  もやもやが増えていく。  とてつもなく苦しくて、それがわからなくて余計にいらいらする。 「ももか……あなたはいったいなんなの?」  呟きは反響するだけで言葉に対する答えは返ってこない。  なんなのよ、もぉ……。あぁ……わからなすぎて意識がぼやっとしてきた。視界まで、なんか霞ん、で、きた、し……。  それに、なんか……身体が異様に火照って、熱い……。  やっぱり、これって……恋なのかな? 「そんなわけ、な……あぁ……」  否定しきる前に意識は闇に、身体は水に、沈没していった。
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