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『で、二時間お風呂で考え事してたらのぼせてしまって、それで意識失って危うく溺死しかけたうえにその後39°の熱出してダウンしたってわけだね~』
「そ、そうよ……」
携帯電話の先から聞こえてくるあびにゃんのお気楽な声に対し、あたしは脱力しきった声で答え返す。
『アホだね~』
凄く、かなーーーーーーり、今すぐにでも、電源ボタンを押したくて堪らないのだけど、広い心でなんとかそれを受け止めた。
『そもそも二時間も考えるほどの悩みってなんなのさ?』
「そ、それは……」
困ったな……熱の影響で頭がぼんやりしてるせいか、なんて説明したらいいか全然思いつかないわ。
『それに昨日午後の授業どうしたの? 休み時間にちょっと寄った時にクラスの子に訊いたら出てないって聞いたんだけど?』
畳みかけてくるあびにゃんの言葉に、ぼんやりした意識を無理やり活性化させ、返答の言葉を探す。
「あ、え……と、屋上でうっかり爆睡してたのよ。最近の疲れが溜まっててね……」
『寝てただけ?』
あびにゃんの声が潜まる。この子なんか気づいた?
「ね、寝てただけよ……。それ以外になにがあ、あるって言うのよ?」
『その割になんだか動揺してる感じがするんだけどな~』
いつにも増して鋭い。さすが長年あたしの友人やっているだけはある。
「ど、動揺なんか、してないわよ。熱のせいよ、熱のせい……」
ふぅ~ん、となんだか信じてない感じの軽い声が響く。くぅ……いつもならなにか言い返してやるのに……。
なんだか凄く悔しくて堪らない。
『あ~そうそう。今日ね、ちょーーうウルトラスーパービクトリースペシャルな美少女が転校してきたんだよ! しかも私のクラスにだよ! もうテンションフルマックス世界一周的なだよ!』
急激なテンションアップにも驚きだが、それ以前にいきなり大声で喋り出したもんだから、耳の奥が痛くてしょうがない。
急いで音量を低くしたが、最低のレベルまで下げてもうるささはさほど変わらなかった。
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