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 そこは真っ白な部屋だった。壁の色もカーテンの色もシーツの色も、なにもかもが白い。その場であたしだけが色を持っているかのようだった。  そんな部屋で幼いあたしは一人ぼっちで絵を描いていた。  大好きな絵をただ思うがままに描きまくる。その表情は楽しげだけど、時折寂しげな表情を浮かべては軽く溜め息をつく。  ある時、久しぶりに真っ白な部屋を飛び出して外へと出かけた。  久しぶりに出る外はなんだか新鮮で、もっといろんな所を出歩きたいと思った幼いあたしは更に外へ飛び出し、ある場所へとたどり着いた。  緑がいっぱいで日向ぼっこにするには快適な場所。なによりも幼いあたしの目を釘付けにしたのは、そこに咲いていたたくさんの花々だった。  色は赤にピンク、黄色にオレンジ、白など様々で、花型は一重から八重、丸い球型などいろいろ。見た目は陽気な雰囲気を感じさせる。  初めて見たその花に、幼いあたしは完全に魅了されてしまっていた。 「あら、可愛らしいお姫様み~つけた」  穏やかで柔らかな優しい、でも少し子供っぽい感じの声色が耳に響く。  振り返ると、幼いあたしの目の前に声の印象と同じ雰囲気をしたパジャマ姿の女性が立ち、その横にはまるで人形のように綺麗な容姿をした可愛らしい女の子が女性のパジャマの裾を握り、隠れるように女性の背後から幼いあたしを窺っていた。  女性は穏やかな笑みを浮かべながら、女の子は相変わらず女性の裾を掴んだまま、一緒に幼いあたしの横まで来ると、女性は花にそっと手を触れ喋り出す。 「この花はジニアって言って、とっても長持ちする素敵な花なの」  そう言って女性は笑顔を浮かべたまま、幼いあたしへと視線を移す。 「あなたはこの花は好き?」  幼いあたしは首を縦に振ってそれに応える。その応えが嬉しかったのか。女性はひまわりのような笑みを浮かべて幼いあたしへと微笑んだ。
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