諦める夢

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 あたしこと花之瑞季(はなの・みずき)が同人活動を始めたのは、オタク仲間の先輩から一緒に同人誌やらない、と誘われたのがキッカケだった。  前々から同人活動には興味があったし、自分の描いた漫画がどこかの編集者の目に止まり、そのまま軌道に乗って漫画家デビューできるかも、なんて甘いことを期待し、先輩の誘いに乗ったのだ。  先輩がシナリオを手書け、あたしがシナリオにそった漫画やイラストを描く。そんな分担作業であたし達は同人活動をやってきた。  しかし、一年前に先輩が都会の大学に進学したため、事実上『(21)は世界を救う』サークルは解散。  だけど、同人活動を続けたかったあたしは新たに自分のサークル『月見酒』を設立し、今日まで一人でやってきたわけだが……。 「はぁ……」  今にも机に溶け込みそうなほど、今のあたしはぐったり状態である。 「どしたのミズキー?」  声をかけてきたのは、あたしの数少ないオタク仲間であり、友人のあびにゃん。クラスは違うけど、よくこうしてあたしのクラスに遊びに来ている。  あびにゃんはテイルズオブアビスのオタクであり、よくコミケのコスプレイベントでジェイドやルークのコスプレをしていることが多い。  ほんとはティアのコスプレもしたいらしいのだが、あんなメロン持ってないからティアは無理だ! とかなんとか。まあ、確かにあの洗濯板ではティアは無理がある。 「昨日の売上金があまりにも低すぎて……憂鬱になってんのよ」 「千円とか?」 「さ、三百円……」 「マジ?」 「マジよ……」 「……え~と、五円チョコ大量に買えるじゃん」 「そんなにいらないし。そもそもなんで基準五円チョコにするのよ……」  なんだか余計に憂鬱になった気がする。 「もうやめようかな……」 「え、同人活動を?」 「それもあるけど、漫画家目指すこと自体をやめようかなって」  同人活動を続けてきて実感した。自分の実力がどれだけのもので、自分の漫画に対する人の評価がどれだけ薄いのかを。  そして、目指した夢に自分がどれだけ程遠いところにいるのかを、改めて思い知った。
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