2章

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何百年も、それこそ気が遠くなるような先から、彼はここへやってきた。 理由は1つ。 この場へ展示してある筈の絵を見る、ために。 絵の題名は知らねえ。 貼り紙に書いてあるけど、読めねえ。 この時代にいんだから、検索すりゃ出てくるかもしんねーけど、それはしない。 彼の時代では、すでに焼失。 美術的価値があるんだかないんだか分かんないもんだから、どこにも載っていない。 いくら調べても見つからなかった。 この時代以前では所在が知れない。 だから、ここへ来た。 ―――夏になっちまった。 元いた時代に思いを馳せる。 そろそろ帰らねえとな、とその場で独りごちた。 .
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