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人間って不公平だと思う。 何故かって? それは俺の容姿が見るからに女みたいで、男にしか告られた事がないからだ。 俺、麻生 可憐は名前まで女の子っぽいが性別はもちろん男だ。 しかし、女は女で細いからって何故か羨ましがるし。 男は男で‘女の子だろ?’って勘違い告白も甚だしい。 だから、間違えてくる男も女もその目は節穴なんだと思う。 「はぁー 今日から新学期かぁ‥ 眠いしダルいな」 そう言いながら家を出て欠伸をしていると、同じマンションから明るい声がして足を止められた。 「可憐くん!」 「ん? あ、亜子じゃん」 「おはよう。 あ、あのね‥ ちょっと相談があるんだけど一緒に登校していいかな?」 「いいよ。 亜子とは幼馴染みだしな」 「うん。 ありがとう、可憐くん」 そう言って隣を真剣な眼差しで歩くこの子は、広瀬 亜子(ひろせ あこ)だ。 亜子とは昔からの幼なじみで、昔はもう一人の幼なじみと一緒に亜子をイジメっ子から守っていた。 まあ今思えば、亜子がダントツで可愛いせいで好きな子イジメを働くオスがいたってだけだよな? 「それで、相談って何?」 「あ、あのね? 好きな人が居るの」 「好きなオス?」 「えっ? お、オス?」 「誰が好きなんだ?」 「あ、あの… 流くんが好きなの」 「へぇー 流か」 可憐は特に気にした様子もなくそう納得すると、ニッコリ笑ってこう言った。 「でも、亜子は流と小さい頃以来会ってないだろ? 何で好きなんだ?」 「あ、あのね? 流くんが私のバイト先に来たの」 「メイド喫茶に?」 「う、うん? でも私の事わかんなかったみたいで」 「なるほどな。 まあ昔の話だからちょっと忘れてんだな、あの馬鹿は」 可憐がそう言ってニヤリと笑っていると、同時刻に流はクシャミをしながら武蔵と歩いていた。 「クシュン!」 「風邪か、流」 「馬鹿は風邪引かないんじゃね? 俺、実は馬鹿じゃないのかも」 「流は馬鹿だ」 「ヒデーな、武蔵」 「誰かが噂してんだろ、普通に考えて」 「そうかなぁ?」 流が鼻を擦りながらそう呟くと、武蔵はフッと微笑み鼻を摘まんでくる。 「な、何すんだよ?!」 「馬鹿って自覚あったんだな、お前。 まあ馬鹿だから仕方ないな」 そう言ってフォローもせず貶す発言をしたのは、梅乃 武蔵(うめの むさし)だ。
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