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「痛くなかった?」 「あ、大丈夫」 「そっすか? なら、良かった」 武蔵はフッと可愛い顔で微笑むと、担任の元へ向かった。 「梓ちゃん、日誌取りに来たっす」 「梅乃くん? 何度も言っているけれど、先生って呼んでくれないかしら?」 「梓ちゃん」 「もう、ダメ! ちゃんと先生呼びしてちょうだい」 「うーん? 神楽先生、日誌お願いします」 「はい、宜しい」 神楽梓はフッと微笑むと、武蔵に日誌を手渡す。 「じゃあ、行くっす」 「宜しくね」 梓はそう告げると、パソコンへの入力作業を再開していた。 「んーと、黒板はきれいだったから花瓶の水替えとかしないだな」 「あ、あの?」 「え? 安達先輩、まだ何か?」 「えっと… 武蔵くんって麻生が好きなの?」 「へ?」 「あ、唐突にごめん」 「いえ? まあ、可憐には振られたばっかすけどね?」 「あ、そうだったんだ」 「安達先輩、お昼って暇すか?」 「え?」 真尋が意外そうな表情をして武蔵を見つめていると、また耳元でだけ聞こえる声でこう告げられた。 「安達先輩って、男装趣味?」 「え?」 真尋はそう聞かれて呆気に取られた顔をしていたが、武蔵はフッと微笑むと離れた。 「じゃあ、また昼に話しましょうか」 「えっと、それは…」 「嫌っすか?」 「あ、ううん? 何処に行ったらいい?」 「じゃあ、ピアノ室はどうですか?」 「わかった」 真尋は普通に承諾したが、武蔵は何を考えているか分からず不安な顔になる。 「別に普通に昼食べるだけですからそんな身構えなくても大丈夫っすよ?」 「う、うん」 真尋は安心したのか少し微笑むと、武蔵もフッと微笑む。 「じゃあ、行くっすね」 「うん、また昼に」 武蔵と真尋はお互いに軽く手を振って別れると、教室へと向かった。 「ビックリしたなぁー」 「真尋、独り言かい?」 「あぁ、雪兎か…」 「どうかしたのかな?」 「あー 武蔵くんにお昼誘われた」 「ほう? そりゃ急展開だね」 「多分女だってバレちゃったかも」 「フッ… 真尋って武蔵くんが好きじゃなかった?」 「うん、そうだけど… 接点があんまりなかったしビックリさせちゃうかもしれない」 「武蔵くんは可憐くんを好きだから?」 雪兎がそう尋ねると、真尋は先程聞いたばかりの情報を伝える。
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