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「武蔵、そこはフォローするとこじゃね? いつからそんなに毒づくような性格になったんだよ」 そう言って捨てられた子犬みたいな顔を武蔵に向けているのは、槇乃 流(まきの ながれ)。 「流、お前さ‥ 好きな奴とか居んのか?」 「好きな子?」 「あぁ。 お前モテるから、本命居るんじゃねーか?」 「本命かぁ‥ まあ、居るにはいるけど」 流が曖昧な感じでそう言うと、武蔵は真剣な顔でこんな事を暴露してきた。 「俺、可憐が好きだ」 「えっ‥ 可憐ってあのオスの?」 「他に可憐は居ねーだろ」 武蔵が呆れた感じでそう言うと、流は真剣な顔をしてこう言った。 「まあ、お前が好きなら頑張れば?」 「あぁ。 今日告ってくる」 「可憐、戸惑うかもな」 「確かにそーだな」 武蔵が自信なさげにそう言うと、流はニッコリ笑ってバシッと背中を叩いた。 「いってーな」 「武蔵が自信なさげなのはらしくないぜ?」 「あぁ。 今のでやる気でた」 武蔵がそう言うと、流も好きな相手の事を真剣に考えながら登校していた。 「なるほどね‥ 武蔵くんは可憐くんを好きな訳か」 「真尋は武蔵くんに告白しないのかい?」 「ユキちゃんこそ、可憐くん狙ってるくせに」 「可憐くんはまだ誰も好きじゃないから、今がチャンスなんだよね」 そう言って物腰が柔らかくニッコリ笑う男は、柳垣 雪兎(りゅうがき ゆきと)。 そしてもう1人は見た目は男の子みたいな服装をしている安達 真尋(あだち まひろ)。 彼女はある理由をキッカケに、男装を始めて武蔵に接近を試みているのである。 その頃、可憐と亜子は龍泉高校の校門を潜って先程の話の続きをしていた。 「亜子、心配?」 「う、うん。 だって流くんとは小さい頃しか遊んでなかったし覚えてなかったら寂しいな」 「大丈夫。 アイツ、馬鹿だけど大事な思い出はちゃんと覚えてるから」 「うん。 そうだよね?」 「任せて。 流にはそれとなく釜かけるから」 「ありがとう! 可憐くんは小さい頃から私のヒーローだね?」 「それ、恥ずかしいから辞めない?」 「ふふっ」 亜子は可愛い笑顔を向けると、自分のクラスへと向かったのだった。 「よりによって流ね? アイツ鈍感なのになぁ」 可憐は小さくそう呟くと、2年2組の教室に入ってまず自分の席にあたる机を見てから目を見開いた。
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